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NYブックピープル物語

NYブックピープル物語』という本を読んで、おおいに刺激を受けた。

ニューヨークの出版界は、世界中の出版関係者にとってのメジャーリーグともいえる場所。
この本にも書かれていたけれど、大物文化人やスポーツ界のスーパースター、歴史に名を残すような政治経済界の大物が自伝や回想録という形で本を出すのはNYの出版社からと相場が決まってる。

そんな出版界のメジャーリーグで孤軍奮闘した1人の日本人の戦記的内容の本。
この本に書かれているのは、90年代前半、まだ日本に勢いがあったバブル期のころのお話。21世紀に入ってからは、日本発の物語やら情報は世界の読者の関心からすっかり消えてしまってるような。

三島由紀夫~村上春樹以来、大学の日本文学専攻者を除くと、日本人以外の読者がいる日本の作家はかなり少ないのが現状。
日本で年間6万点以上の出版されてる書籍やら雑誌は、海の向こうではその存在すら知られていない。独占取材のアポも取れないのがさむい。
この本の冒頭部にも、日本の出版物で英語翻訳されたものは年間50冊ぐらいしかない(ほとんど漫画)と書かれてた。

いま、海外版権のしごともをしているのだけれど、外国人のエージェントやらライツ系ビジネスマンの人たちは漫画の話しかしないのがけっこうさみしい。
その漫画ですら、大人が読むものではなく未成年層向けのキャラクタービジネスの一つとしてとらえられてる気も。

最近、パラダイス鎖国なんていう言葉がはやってるけど、
国内出版界の鎖国ぶりは他業界よりさらに末期的。
ある意味、ルールを覚えてしまえば単純作業の繰り返しで済むから楽で居心地がいいけれど。。

他人事ではないけど、本に描写されてる激烈な資本主義的生存競争に比べると、ぬるま湯なんだなぁと。
よくも悪くも、配給制度に近い流通機構が成否を決める日本の出版界の場合、空気を読んだ組織プレーが重要で個人の企画力とか交渉力はあまり問われない。
反面、個人のマンパワーが問われるメジャーリーグで通用するのか?という不安が大きくなる。

同世代のエッジのきいた編集者やプロデューサーは
閉鎖的な村社会を抜け出しメジャーリーガーになるために渡米するひとがここ1、2年で増えてきた。
むちゃくちゃ大変だと思うけど正直うらやましい。

この本を読んで、10年以上前のバブル期の安穏を捨ててメジャーリーグに挑んでいたひとがいたんだなぁと感銘を受けた。

海外版権のしごとはなかなか得がたいダイナミックな刺激はあるけれど、めんどいことも多く頭が痛い。
著者の浅川氏が、スーパーマンではなくふつうのひとっぽいのには親近感を覚える。

「他のビジネスでは、日本もアメリカもなく製品をつくりグローバルに販売することが常識。同じことが出版の世界でもできるんじゃないか?」

と、ふつうに考えふつうにやってみようと思ったに過ぎないような。

ふつうのひとが変化球に磨きをかけてメジャーで勝負した、
という意味で出版界の野茂英雄みたいな存在のように思える。

『NYブックピープル物語』は、本好きなふつうの人たちが、
会社の看板ではなくプロフェッショナルな個人として、ふつうにいきいきと仕事しているさまを描いた物語。

ふつうのことを、一歩一歩地道にやっていくことが重要なんだなぁと。

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