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電子の城は

北京オリンピックの聖火リレーをめぐるいたちごっこが世界中をにぎわせている昨今、中国についてとても興味深い本、
中国動漫新人類』を読む。

日経BPオンラインの人気連載を書籍化した本で、いま中国政府と中国の若者の間になにが起きているのかをわかりやすく解説した1冊。

今、中国では日本製アニメや漫画のコスプレイベントが爆発的に盛り上がってるそうな。
なんと、イベントを放映したTV番組の視聴者数は5億5000万人にも及ぶらしい。。
中国の一般的な若者にとっては、オリンピックよりコスプレイベントのほうが身近な存在なのかも。
この本を読むと、最近はスポーツにおいても、中国が国家施策として力を入れてきた個人競技(体操などは個人競技のためメダル数を増やしやすい)より、団体競技のほうが年々力をつけている様子。

NBAでも中国人スター選手を数多く輩出しているバスケなんかは、90年代の『スラムダンク』のTV放映によるバスケ人気の大ブレイクがブームの発端らしい。
その後、スラムダンクに憧れた身体能力の高い若者たちが、従来の個人競技ではなくバスケに流れはじめ、国内のバスケット人口は一気に3億人(!)をこえたそうな。

もともと中国は、政府による言論統制・出版統制はもちろん、外国文化の流入には厳しい鎖国的なお国柄。

そんな中国に日本の漫画アニメが海賊版として流入し、5億人を優にこえる若者たちに多大な影響を与えてしまったのは、政府当局の最大の誤算だったのだそうな。

日本のコンテンツが単純に安価な放映権料だったため、内容も子供向けもしくは低俗的だと思われたため、政治的にはいっさい問題ないだろうという政府の特例判断が不測の事態をまねいたらしい。

よく知られる話だけど、中国の情報鎖国体制はインターネットにも及ぶ。
中国政府や自国民に都合が悪いと判断された情報は、世界最先端のフィルタリング技術で中国内手前のゲートで遮断される。

この世界最強のFirewallは別名「防火長城」と呼ばれ、チベットとか台湾とか人権なんていうキーワードがついた情報群は、電子の城の手前でアクセスブロックがかかるそうな。最近では、日本の漫画やアニメの関連キーワードも禁止されてる感じ。

そして、ディフェンスが強いだけじゃなくてオフェンスも強いことは、
日本の外務省やら各省庁の公式HPやらNTTなどの大手日系企業サイトがハッカーからの猛烈なサイバーアタックを受けて炎上したことからも有名。
ネット空間では、アメリカではなく中国最強説もあるそうな。

ただし、強固な防壁を誇るその電子の城は外部からの攻撃には猛烈に強い反面、内部からの崩壊にはもろい。

すでにその内部崩壊は始まっていて、この城を崩すのは近年まれにみる徹底的な反日教育を受けた若い世代なのだとこの本には書かれてた。

日本の作品の根底に流れる独特のノンポリ思想や自由にふれた中国の若者たちは、政治的な正しさとは関係なしに自分で選んだり感じたりする個人の選択の自由を知ってしまったのだと。

戦略的か偶然の結果かはさておき、
一度でもパンドラの箱を開けてしまった若者たちはもうもとには戻れないのだと著者は指摘する。

米兵からチューインガムやチョコをもらった占領下の日本人が、GHQの戦略的なメディアコントロールのもとに戦後民主主義に染まっていったのと同じことが、これからの中国に起こる可能性は高いのだそうな。

しかし、日本コンテンツ好き=日本好きという単純な図式ではない。
電子の城崩壊の時に混乱を来たすのは中国政府だけではなく、歴史意識を持たない日本人と日本経済もその渦の中に巻き込まれるのだと著者は警笛を発す。
「アニメと漫画が中国を変えた。」
なんちゅうライトな腰巻文からうかがいしれないずしりと深い内容の1冊。
北京五輪期間、リアル空間より激しい勝負がサイバー空間で繰り広げられるのかもしれないなと。

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» 本の交流 04112008 [つき指の読書日記]
 日本にとって近くて遠い、その国が何を意図し、本当のところは何を求めているのか、訳のわからない苛立たしさを感じさせるのは大陸中国ではないか。靖国神社に対する内政干渉、あれだけの巨額な有償、無償の援助、ODAにもかかわらず、感謝の礼もない。平気で反日目的の捏造された歴史記念館をこれでもかこれでもかとつくる。戦前同様の北京政府が陰で操る反日デモもある。今回の毒入り餃子での非科学的な態度、隠蔽体質、いったいどうなっているのか。SARS問題もあの不衛生さならば、まだまだ起こるだろう。そして今回のチ...... [続きを読む]

受信: 2008年4月10日 (木) 19時34分

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