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電子書籍は電子書評で飛翔する

昨年12月末にリリースした、
オリジナル電子書籍『まんが王国の興亡』の反響が高まってきてうれしい限りです。

電子「コミック」をWEBとケータイで国内外に販売していくチャネルは
丸4年以上かけていろんな異業種企業と協力して整備してきたものの、
電子「書籍」の販売チャネル整備は作品編集も含めてこれからといったところ。

漫画史や名作漫画の誕生背景についてよく参考にさせていただいてる
漫棚通信さんを皮きりにネット書評がじょじょに増えてきたので、
家で片っ端から読みました。

Copy & Copyright Diaryブログのような漫画関連以外のブログにも取り上げていただき、漫画読者以外にも広く出版・コンテンツ関係に興味を持つ読者に届くことを期待。

そして、読者とユーザーの意見はすべて正しいなぁと。

午後、リスクをとってマンガ界の未来を握る力作を電子書籍に委ねていただいた
著者の中野晴行さんにも電話。

著者側、販売側ともにトライしてみなければわからなかったことが
いろいろわかって目から鱗ですね~としみじみ。

今後、書籍化・オンデマンド化、iphone・ケータイ配信など
本の内容どおりのワンソース・マルチユーズ展開をすすめていくうえで
とても参考になりました。

せっかく電子書籍を体験してみようと思ったのに、
マッキントッシュPCやブラウザ環境のため読めなかった方は、

たいへん恐縮ですが春に書籍化されるまで
こちらのダイジェスト版無料WEB連載でしばしお待ちください。

※過去記事の全てと毎週更新している最新記事もすぐ読めます。

翻って、電子書籍のメリットはというと、
省スペースで品切れ(=絶版)がない、
安く買えてすぐに読めるなどいろいろあれど、
ローコスト&スピーディな制作発売もウリのひとつ。

一部の有名作家や売れ筋ジャンルだけでなく、
コアニーズのあるニッチジャンルの作品や新人作家の作品が、
今後も電子書籍として素早くリリースできるよう、採算分岐点は極力低くがベター。
電子化・原稿料以外の広告・販促予算を抑えることで成立するモデルです。

そして、電子書籍の両刃の剣ともいえるのは「本」という現物がないこと
本屋さんに大量に並べて店頭告知したり、回し読みや図書館で借りてもらうことや
新聞・雑誌の書評に掲載してもらうことができない。

よって、電子書籍は口コミがすべてです。

コアな活字読者に支えられる専門書というものは短期的に売るものではなく、
時間をかけて売っていくロングテール商品。

書籍流通の専門家曰く、現在の書店ルートにおける専門書は、
出版社規模の大小やジャンルで異なるものの
初版2,000部刷り、約300~500書店弱に置いてもらって
実売1000部(返品率50%)、重版なし
なんていうのがざらなのだと。

俗に「ジェット返品」と呼ばれる、書店への新刊配本翌日に即返品される割合も高い。
固定ニーズがあっても実売数百部に満たない専門書もたくさんあるそうです。

今回、未体験の「電子書籍」というものにトライしていただいた読者の方による
無償口コミのおかげで、ゆっくりと時間をかけて「紙の本」以上に売れてくれそうです。
紙に比べて販管費がかからない分著者ロイヤリティ(=印税)が紙の数倍はあるため、
TVなどのメディア露出で勝負しない専門家にとってはリターンの大きいモデルです。

いまや青果販売のように短期サイクル化した書籍販売の流れに逆行し、
ロングテールな専門書をさらにロングテール化していくのが電子書籍の存在意義

今回の試みは、著者の中野さんの実験でもあり個人的な実験でもあります。

書店流通とネット流通とケータイ流通、オンデマンドとソーシャルメディア、
可能な全てのチャネルをフル活用して
「本」の可能性を探るプレマーケティング第1弾的意味合いも。

SNSやブログしかり掲示板しかり、
いろんな賛否両論がネット上で巻き起こり広がっていくのは嬉しいなと。

特に、アルファブロガー竹熊健太郎さんのブログ「たけくまメモ」にて、
今回の実験のメリットデメリットと現時点での可能性について
ほぼ正確な鋭い分析をしていただいていました。

企画者サイドとしては本当にありがたい限りです。


なぜ今リリースしたのか
なぜこの価格なのか
なぜこの仕様なのか
なぜコピーできないのか

電子書籍先行配信については
単純に発売前日まで連載の最新原稿を挿入していたため
紙の書籍出版の準備をするヒマがなかったというのが真相。

電子書籍のおしごとは、まずはビジネスモデル作成からはじまって
契約交渉&編集&営業・広報・サイト編集&開発&チャネル開拓
が分かれていなかったりも。
本屋を立ち上げながらそこで売る本も作っていくという感覚です。

今回のプロジェクトは
通常のサイト運営業務の年末進行で火を吹いてる中、
書籍編集・デザイン・プロモーションの経験をなんら持たない
本と漫画好きの素人有志スタッフが集まって、
書籍出版経験者のようにリスクを恐れて批評家的スタンスを取るのではなく
ひとまず素早く形にしてみないとね、という気合一発で始動しました。

技術仕様改変に関する疑問や要望については、
今回のトライアルは企業としての企画というより
著者の中野さんとの個人的なトライアルとしてスタートしただけなので
現時点で社としての正式回答は正直すぐには難しい感じです。

読者の方々の全ての疑問や要望は玉虫色の日本のカイシャ的回答ではなく、
これまで同様にさまざまな業種の提携企業やフリーランス有志のお力を借りつつ、
今後一つ一つ形にしていくことで答えていきたいなと考えています。

出版社営業や流通、書店など現場の各担当者さんたちの最前線の情報や
出版状況クロニクルの小田さんのような専門家による分析を総合すると、
「本」の世界恐慌が今年起こる可能性も。

特に、その道の専門家が時間をかけてきちんと調べて書いた
ニッチでもコアニーズのある専門書は、
町の本屋さんからどんどん姿を消しつつあります。

そして、世界的な不況により、
資金的余裕のあった国内大企業の予算・人海戦術による
チャネルパワーと勘を頼りに本を売っていけた時代ももう終わりそうです。

高コストかつリスキーな書籍出版前に電子書籍で発売できれば、
旧世代のマーケティング手法ともいえるユーザー性別・年代属性・住所といった
本を買うこととあまり直結しない情報ではなく、
どんな作品を買っている読者がいくらでいつ買うのか(あるいは買わないのか)
というプレマーケティングが電子書籍化によって可能。


WEB連載→電子書籍化→オンデマンド書籍化→書籍配本
→各国語翻訳配信→各国語出版

という電子書籍発のモデルがふつうになる時代ももうすぐ。

『まんが王国の興亡』は漫画読者や漫画業界人だけではなく、
本と本の世界を愛する読者はもちろん、
著者・編集・営業・流通・小売・印刷・製紙・図書館を含むすべての出版人向けに作りました。

そこにある危機ではなく、希望と捉えるひとにこそ読んでもらいたい1冊です。

価格も仕様も内容もやがてくる未来から逆算し、試行錯誤して考えました。

時間をかけて全てが連動した時、この実験の成否がわかるはず。
成功した時は、多くの専門家がこのサイクルを前提に作品を書き、
多くの出版人、読者の選択肢が増えるようになるはずだと期待して。

いろんな角度からの書評を読みつつ感じたのは、
このサイクルがアナログな本好きとデジタルネイティブたちの力を借りて、
時間をかけてつながっていくだろうという予感です。

時間をかけてひとつひとつユーザーコメントを読みながら、
全ては本番までのエクササイズということなのかなと感じたりも。

こむずかしいことはさておき、
まだ海のものとも山のものとも知れない電子書籍を読んでいただき
書評を書いていただくというのは嬉しいことです。

自分のへっぽこ書評も気合いを入れて書かねばなと反省しつつ。

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