ゆるい希望のメディア

池田信夫さんのブログエントリーがまた盛り上がっている様子。

希望を捨てる勇気というエントリーにて若者の今について池田さんはこう書いている。

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残念ながら、若者にはその力はない。かつてのマルクス主義のような、彼らを駆り立てる「大きな物語」が失われてしまったからだ。こうして実社会の共同体から排除された若者は、仮想空間で共同体を築く。「2ちゃんねる」に見られるのは、似たもの同士で集まり、異質なものを「村八分」で排除することに快楽を見出す、ほとんどステレオタイプなまでに古い日本人の姿だ。世界のどこにも見られない、この巨大な負のエネルギーの中には、実社会で闘うことをあきらめた若者の姿がみえる。

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先ゆき暗い経済状況と強固なレガシースステムのせいで、
希望格差と世代間格差が広がりつつある社会の中、
諦めてしまっているかのように思える若者は確かに多い。

しばらく使ってないけど、2ちゃんについての指摘も当たらずとも遠からずか。

いつにもまして熱心なユーザーコメントの一つ一つを読むと、
共感できたりなるほどねと勉強になったり。
確かに、理不尽な世代間格差は少なからぬ若者から希望を奪っているに違いない。

しかし、果たして若者は希望を持たずに生きていけるものなのだろうか?

悲観論や厳しい状況はリアルとネットにあふれているけれど、
ポジティブな情報もまたけっこうあったりする。

団塊以上の爺世代は若者は本を読まなくなって馬鹿になったというけれど、
『神保町ブックサロン』で連載をお願いしてる永江朗さんもよく語っているように、
世論調査でも昔より今の若者のほうがはるかに本を読んでいるのも事実。

本というものは、ネガティブなものもあればポジティブなものもあるけれど、
総体的に考えるとポジティブな方向に若者を向かわせるメディアだと思う。

本を読んでも利口になったり金持ちになったりするわけではない。

しかし、他者の経験・勇気や成功・失敗を糧に
なんとなく前向きになってしまうこともあるのではないかなと。

理想論ではなくて単純に、本を作ったりそれを伝えたりという作業は
なんらかのポジティブなエネルギーなくしてはできないもの。
本を読むという行為はなんとなくその影響を受けざるをえない行為でもある。

神保町ブックサロン』は、本の匠の方々による普通にポジティブな情報の力を借りて、
過剰なネガティブ論に流されないほどほどに楽観的な空間でありたいと思う。

そう。名作ネバーエンディングストーリーにおける、ファンタージェーンのような空間。

確固たる立派な希望がなくとも、ふつうの等身大の己のままでよし。
なんとなく空想しているなかでふと軽くチャレンジしてみればいつかはかなうこともある。

いつの世も若者ってそんないい加減かつ身軽な存在じゃないのかなと。

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出版業界人必読の 活字メディア未来地図レポート

新メディア『神保町ブックサロン』にて、
活字とネットカルチャーの働きマン必読の新連載
活字メディア未来地図レポート」をスタートしました!

2009年4月17日(金)より、
ITジャーナリズムの第一人者・佐々木俊尚さんによる新連載
活字メディア未来地図レポート」を開始しました。

ITツールを駆使し活字ジャーナリズムの最先端に位置する気鋭のジャーナリストが
クラウド化、フラット化していく活字メディアの行方を探っていくレポート連載です。


IT技術革新と広告不況の中、
新聞・雑誌などレガシーな活字メディアはどう変わっていくのか?

kindleやiPhone、googleといったグローバル情報プラットフォームの台頭で、
読者・メディア・著者の関係はどう変わるのか?

ネットメディアの活用を考えている方、メディアビジネスへの参戦を考えている方、
新規事業の種を求めている方には目から鱗の連続のアナライズレポートです。

こうご期待ください。

Column_sasaki

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出版文化論講義コラム 本と本屋さんの夕日 スタート!

ぷち創刊したばかりの新メディア『神保町ブックサロン』にて、
本と本屋さんを愛するすべての読者に捧ぐ新連載
本と本屋さんの夕日」をスタート!

2009年4月17日(金)より、書評家・ライターの永江朗さんによる連載コラム
本と本屋さんの夕日」を開始しました。

「本と本屋さんの夕日」は、
若い読者に対する本の世界の水先案内人的存在であるライターの永江朗さんが、
世界的にもユニークな日本の書籍文化・書店文化の変化を
歴史や社会風俗の変遷と照らし合わせながら語っていく出版文化論講義コラムです。

昭和の高度経済成長と平和の下で花開いた、
バラエティ豊かな出版物とともに育ってきた読者と
昭和を知らない平成生まれの読者に向けて、
近現代出版文化史を、本の世界の案内人がわかりやすくナビゲートしていきます

本の世界の歴史と現在のポイントさえ押さえていれば、陽はまた昇る。

本の世界の豊かさをより深く知りたい、これから本の仕事をしていきたい、
本の仕事をもっと面白くしたいと考えている人に向けて
継承していくべき良き出版文化と、
変化していくべき古い既成概念について語り継ぐWEB講座連載。

毎週月曜日に更新される予定です。乞うご期待ください。

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神保町のブックサロンメディア創刊!

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今日、WEBマガジンのベータ版をぷち創刊しました。

これでなんとか、GWが迎えられそうな感じでひと安心。
今後は多くの本の匠の方々にご協力いただき、ほぼ毎日更新型フリーメディアを目指します。

創刊記念インタビューは「ハゲタカ」原作者の真山仁さん。

本・活字・漫画好きの方はぜひ読んでみてください。

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BOOKGUILD<本の匠>のためのオンラインジャーナル

神保町BookSalon
http://www.sogotosho.daimokuroku.com/?index=rensai


<主な連載>

●活字メディア未来地図レポート/佐々木俊尚
未来型書店の新しい構造とは

●本と本屋さんの夕日/永江朗
平成生まれでもよくわかる近現代出版文化論講座開講!

●孤高のインディペンデント企業/日暮泰文
自由業と実業、どっちを取るか

●国際情報のマエストロ/フォーサイト編集長 堤伸輔
キーワードは「海峡」
●東洋文庫の歩き方/平凡社 編集長 保科孝夫
おさらい2――思想を読者に手渡す方法
●イズミ少年の漫画日記/泉麻人
大リーグとミステリータッチの終盤

●まんがのしくみ/マンガアナリスト中野晴行
12年連続マイナス成長が続くまんが出版に「喝!!」

●まんがのソムリエ
春にふさわしい不思議であたたかな風景とキャラクターを楽しむ

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美貌男編集長

WEBニュース『サイゾーウーマン』にて興味深い記事を発見。

男性向けファッション誌「メンズクラブ」の編集長の個人ブログが話題になってるそうな。
ハンサムリッチ」と名乗るその編集長氏のブログ名は
「トガブロ。~南青山で働くメンズクラブ編集長・戸賀敬城のハンサムリッチな社交&お買いもの日記~」
ダイレクトなネーミングもすがすがしい。

Togaburoror

ブログを読むと、「美貌男」と書いて「ビボオ」と読ませるそうなw

映画『ハンサムスーツ』でも本人役でスクリーンデビューを飾ったらしい。
ハンサムスーツは面白そうだ、と思いつつもまだ観てなかったので知らなかった。

そして、その自己愛とブランド愛に満ちたデザインとブログ内容が
広告不況のさなかの『雑誌業界のKY』的な目で冷やかにとらえられることもあるらしい。

この編集長さんには、以前なにかの集まりで名刺交換したことがあるけど、
当時は派手だとか軽薄とかまるで感じさせない真面目そうな印象しかなかった気がする。

男性ファッション誌の編集長が、ハンサムリッチなモテおやじ
.なんて言うのはとてもいいことだと単純に思うんだけどなぁ。

大手女性誌が冴えないおじさんたちによって作られていたり、
そのジャンルの知識も興味もない高齢の編集長が
社内事情と年功序列でなんとなく作らされているという雑誌も多い中、
編集長みずから雑誌のコンセプトや方向性を体現、発信するのは大事なことじゃないかなと。

ネットという無料情報時代で一億総編集者・総表現者時代ともいわれる昨今、
ユーザーの方が知識も経験も豊富でトレンドの最先端を走っているのは事実。

作り手がこうでもしないと、買われる雑誌作りなんていうのは難しいのかも。
この編集長さんには逆風にめげずがむばってほしい。

ネットは新旧やプロアマ問わない自由競争の世界。
職業編集者の情報編集力がこれから通用するのかどうか
もろに問われてしまう世界でもある。

1日のアクセス数が6000PVになって喜んでるらしいけど、
その100倍以上を稼ぐ情報編集力がないと、
広告や芸能人に過剰依存しない有料媒体づくりは成立しないんじゃないかなと。

しかし、なんやかやと理由をつけて縮みゆく国内リーグに引き込もる雑誌人が多い中、
持てるリソースをフル活用し、
ネットというメジャーリーグに勝負するリスクをとった勇気にはリスぺクト。

最新トレンドなんぞに疎いおやじとしても、勉強がてらたまにチェックしたいなと。

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ハゲタカ 新聞業界編  『ザ メディア 新聞社買収』

今日は、以前より会いたいなと思っていた
『ハゲタカ』や『メディアの砦』の著者・真山仁さんにじっくりお話を聞けて面白かった。

ハードなビジネスサスペンスな作風とは違い、ご本人はとてもソフトな人。
そんな真山さんだけど、新聞界出身者としてか、
ジャーナリズムの本分を忘れた一部の新聞社に対しては相当な怒りを感じている様子。

新聞が読まれなくなったのは、そこにオリジナルな情報がもはや無いからだ
とばっさり切り捨てていた。

今まで明かされなかった新聞業界の光と影については雑誌連載中の
ザ メディア 新聞社買収』でがっつり描いているとのこと。
単行本発売が非常に楽しみ。

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そしてご本人は新聞ではなくネットでもかなり情報収集しているらしく、
朝日・日経・読売の大手新聞3社連合サイト「あらたにす」の読者無視ぶりには
「だめだこりゃ」と意気投合(笑)。

お話をして感じたのは、作風同様にストイックかつロックな魂を持つ作家さんだなぁということ。
その反面、ご自身の作品が春に映画化されることには、
「とてもしあわせ」と子供のように無邪気に喜んでいたのが印象的。

本と映画で育ったひとにとって、じぶんの書いたものが
ベストセラーになり映画にもなってしまうというのはまさに夢のような出来事。

うらやましい~!


今週は真山さんを最後に、津野海太郎さんやら佐野眞一さんなど
本の世界のロックな方々とお会いできてよかった。

しかしこの1週間、本の世界の賢人のようなひとたちと立て続けに会い続けたら
ついに脳みそがパンク。

まるでフィクションのような重くきなくさい話をさらっと語る、知の番人たち。
年齢を感じさせない、いぶし銀の重い切れ味がずしり。

情報量と経験値の圧倒的な差を感じてへとへとの1週間がやっと終わった。
土日こそは脳みそに余るむつかしいことは1cmも考えたくないなと。

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プロ野球版・男の星座 清原和博 「男道」

51h7oycb2nl__sl500_aa240_野球番長こと元プロ野球選手清原和博の
最初で最後の自叙伝「男道」を読了。

むう~。

文句なしに、これまでに読んだスポーツ選手自伝史上最高に面白い。

映画「ラストサムライ」中の台詞から物語は始まる。

「彼がどんな風に死んだのかを教えてくれ」
「いえ。私は彼がどんな風に生きたのかをお話しましょう」


清原というキャラクターが持つ稀有のスケール感に加え、
出版企画者の見城徹氏(幻冬舎社長)一流の濃ゆい味付けが足され、
題名通りの「男道」にふさわしいマッチョな熱血スポ根物語になっていた。
大阪一の天才野球少年の冒険譚という感じ。

しかし、清原は小学生のころからプロフェッショナルな野球人だったんだなぁと。
桑田とのKKコンビで甲子園2回優勝を果たし
「甲子園は清原のためにあるのか―」 とアナウンサーを絶叫させた高校時代。
王貞治を超えうる可能性を持つ唯一のバッターと騒がれ続けた
岸和田出身の天才野球人の半生は数々のドラマに満ちていた。

小学生時代から自分のバットスピードのあまりの速さと遠くにとぶ打球に
まわりが驚きつづけていたこと。
プロになってもファンを驚かせ続けることを自らの使命と感じていたこと。
王貞治は憧れではなく心のライバルだったという本音も淡々とつづられる。
過去の自慢話のようには聞こえないのが清原が怪物たるゆえんか。

西武ライオンズに指名されたときのせりふ
「埼玉県? 埼玉県ってどこや?」
も野球一筋の清原らしくて笑えた。


TVや新聞で報道されていた、プロ入り以降の桑田や巨人軍フロントとの確執。
これまであまり明かされなかった当時の本音が、
湿っぽくなくまっすぐに語られていて、まことに男らしい。
清原節というより長淵節というべきか。


スター不在といわれるプロ野球界で、23年もの長い間主役を張り続けた清原。
その選手生活を野球史に残るドラマに仕立てたのは、
「野球版・男の星座」ともいえる敵役やいぶし銀の助演陣の存在。

近鉄・野茂、阪急・山田、ロッテ・村田兆治など当時のパ・リーグエース陣との迫真の一騎打ち。
尊敬する落合からの「おまえのピークはPL時代で終わってる」というような厳しい指摘。
東尾、仰木といった親分肌の監督たちや西武の堤・読売のナベツネ両オーナーらとの人情味あふれるエピソードの数々。
まるで、ど演歌か古き良きやくざ映画のよう。

そしてラストの引退試合。
複雑な思いを抱き続けた王監督からかけられた有名な言葉
「生まれ変わったら、必ず同じチームでホームラン競争しような」
にもしびれた。

しかしながら、この一遍の野球映画を
この上なくドラマチックなものにしたのは、
生涯のライバルであり無二の球友でありつづけた桑田の存在。

PL学園VS池田高校戦にて
KKコンビがさっそうと甲子園に登場したあの遠い夏を覚えている、
日本中の元野球少年感涙の1冊。

■運命の時 ~昭和60年ドラフト 桑田・清原の進路~

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壁を破った2人の偉大な日本人 水木しげる先生と村上春樹氏

今年は、日本人の作家2人が他国の権威ある出版賞を受賞したそうな。

1人は、われらが御大-生ける伝説―水木しげる先生。

ぬあんと、欧州最大の国際漫画フェスティバルにて
「未来に残したい漫画」という漫画遺産部門で見事栄冠に


受賞作は反戦漫画『総員玉砕せよ!』。

渋いっ! 渋すぎるぞ欧州アート界のインテリたちは!

しかし、妖怪とか太平洋戦争とかまったく西洋的でない日本固有のテーマの作品が、
西欧文化人の閉鎖的かつ厚い壁を打ち破ったことも特筆もの。

2年前に、『のんのんばあとオレ(先生の自伝漫画)』で
水木先生が同大賞に輝いているのでこれで2回目の快挙。
星の数ほどいる日本人漫画家で同賞を受賞したのは、あとにも先にも水木先生ただ1人。

さすがに昨年、在住ウン十年にしてわがふるさと調布市の名誉市民にやっと輝いただけのことはあるなぁとw

しかし、国内であまり話題にもなっていないのはなんでだろ。。

排他的かつ西洋文化中心の欧州でここまで認められた日本人アーティストは
黒澤明&北野武の両映画監督以外では初めてじゃないのかと。

手塚氏や赤塚氏同様、たぶんご本人が存命中の間はその偉大さがわからないのかも。

それはさておき、水木信者の1人としては嬉しいニュース。

ゲゲゲ世界戦略は思わぬ形でフランスで進行中!

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2人目は、村上春樹氏。
イスラエル最高の文学賞エルサレム賞の受賞が決まったそうな。

村上氏がすごいのは、「受賞はイスラエルの対パレスチナ政策(虐殺や封鎖政策など)を擁護することになる」として受賞辞退を求めた国内のNGO「パレスチナの平和を考える会」とその賛同者たちの抗議を受けながら、それでも授賞式への参加を決断したこと。

イスラエル軍のパレスチナ自治区ガザ攻撃で約1300人の死者が出た直後だけに、
並みの神経だったらその決断はできないだろうなと。

リスクを負ってエルサレムでの授賞式に出席した村上氏の
昨日のスピーチが素晴らしい。

以下はスピーチの一部を要約して抜粋

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

1000人以上が(ガザ攻撃で)死亡し、その多くは非武装の子供やお年寄りだった。
そして、日本国内で私の受賞拒否を求める声も上がった。

作家は自分の目で見たことしか信じない。
私は非関与やだんまりを決め込むより、ここに来て、見て、語ることを選んだ。

『壁』(戦争を生む社会システム)は我々を守る一方、時には組織的な殺人をも強いる。
そして、人間は壁にぶつかると割れてしまう「卵」のようなものだ。
ただ、その卵(人間)は個性を持つかけがえのない存在であり、自分は常に卵の側に立ちたい。
「壁」は高く、「卵」の勝利が絶望的に見えることもあるが、我々はシステムに利用されてはならない。我々がシステムの主人なのだ――。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

まるでオバマ氏を彷彿とさせる名スピーチ。

英語のスピーチ全文はこちらの池田信夫氏ブログで。
(めったに他人をほめない池田信夫氏が珍しく他人を激賞するさまにも感動)

世界不況の影響かパラダイス鎖国化がますます進む2009年の日本で、
少なくとも2人の日本人が厚い壁を破ったことは間違いない。

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本の雑誌よ 永遠に

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本屋でなんとはなしに『本の雑誌』年末特大号を立ち読みしてたら、
編集長の椎名誠がさっくりと衝撃的なことを書いていた。

○以下抜粋
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2008年になって『本の雑誌』の経営が急に悪化し、このままでは「休刊」に追い込まれるかもしれない、と現経営者に聞き、これはいかん、と思い、ぼくはもう何年も前から実質的な編集現場から離れていたが、なんとか立ち直る方向でみんなと頑張ることにした。

今回いきなり自分の編集長の系譜を書いたのは、これが最後の「今月のお話」になるかも知れないから、と言われたからだが、これを書いている途中で(締切前日に)まだもう少し這いつくばってでも出していこう、というスタッフみんなの決意になった。
地方の講演などに行くと、むかし『本の雑誌』読んでました、などと言う人とよく会うけれど空前の危機を迎えてしまったのでぜひまた『本の雑誌』を読むようにしてほしい。

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本の雑誌は1976年から続く、業界ミニコミ誌の草分け的な書店直販雑誌。
(雑誌扱いではなく、書籍扱いだから実質は「本の本」か?)

愛読誌というものでもないけれど、
中学生ぐらいからなんとなく図書館で読んでいた雑誌のひとつ。
小さくてゲリラ的な自由を持つ出版界の象徴ともいえる存在。
良くも悪くも、こんないい加減な雑誌がよく30年以上も休刊せずもったなぁ
といえなくもないけど、なくなってしまうのはさびしいような。

仲俣暁生さんのブログ「海難記」でも、出版界における同誌の意義と今回の件が語られていた。

雑誌仕入の仕事をしている知人に聞くところによると、
雑誌の返品率が再び40%近くに跳ね上がってしまったため、
来年から雑誌の配本総量規制ががちんこで始まるらしく
未曾有の雑誌休刊ラッシュが待ってるそうな。

ダイヤモンド社あたりのビジネス系雑誌は比較的堅調らしいけど、
広告依存のファッション誌やら総合誌やらのマス媒体はどんどんなくなるだろう。

とはいえ、小さな出版社が気合いで作ってるこうした古き良き雑誌は残って欲しいなと。

世界的不況による紙代の高騰とかネットへのユーザーニーズの移行とか、
今の雑誌のビジネスモデル自体の問題も大きいんだろうけど、
全ての雑誌が不況の影響を等しく受けるわけではなさそう。

実際のところ、買切で返品もなく制作費も部数も少ない本の雑誌の行く末は、
これまで立ち読みで済ませてた元読者が今月号を買うか買わないか、
に大きく左右される気が。

ということで、なんとなく今月はふだんより雑誌を多く買った。
休刊されないために買う、
というのが来年からの読者の役割の一つでもあるのかなぁと。

この内容であれば、低コストで全てWEBマガジン化して、
連載がたまったら単行本を電子書籍配信というモデルにすぐ移行できる感じがするけど、
本の雑誌はやっぱりあのザラ紙で読みたいもの。

休刊すれすれだというのに、1月号の誌面も昔同様にゆるい。
来年のことも考えずに「9人の新連載が一挙スタート!」するそうなw
誌面そのままに来年もゆるゆるだらだらと続けばいいなとふつうに願う。


WEB版 本の雑誌

「オトコの本棚」連載に、ハゲタカ主演の大森南朋が登場。
大森南朋、渋いっす。

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どすこい出版流通 ~熱き出版人の遺書~

どすこい 出版流通

著者:田中 達治

本の世界を目指すひとのための新しいバイブルであり、本の世界の原点を失わないための警句の書でもある。

どすこい 出版流通

本書は、出版業界のインフラ整備に尽力しつつ、一度倒産した筑摩書房を立て直した、前取締役営業局長の故田中達治氏の遺作コラム集。

内容は、本人が同社の書店向け新刊案内に1999年〜2007年まで掲載していた業界よもやまエッセイ的な連載をまとめたもの。

田中氏が亡くなった後、その凄い仕事ぶりと遺志を継ぐ形で、書店、取次、出版社……出版流通に携わるすべての人のテキストにすべく版元ドットコム有志の協力によりポット出版から出版された1冊だそうな。

他のブロガーさんも書いているようだけど、腰巻にもある一文

『私は「良書」という言葉が、いや、ことあるごとに「良書」を口にする出版人がキライだ。……』

にひかれて購入し、仕事中に一気に読んでしまった。

筑摩書房というと、古き良き人文書系の「良書編集」出版社と思われがちだけど、じっさいに同社を支えていたのは、ロジカルかつ広い視野をもった近代的営業マンだった。

書店員を含む業界人向けに書かれた内容のため、業界裏話や業界用語が満載だけど、田中さんは本書で、沈みゆく本の業界の中で出版人としての個人ができることがなんなのかを軽妙な文体の中で、時に熱く、時に鋭い毒舌で読者に訴えかける。

本の仕事をしている一読者として感情移入できたし、出版業界のEDIやらSAやら実際に自分も直接的・間接的にタッチしたインフラ構築プロジェクトやら「逆送」「配本ランク」などの独特の商慣習課題についての所感も頻出していて、その主張に納得しつつ激しい共感も覚えた。

『良書を売り損じたのは、本屋や国民や政治のせいではなく私がヘタなだけである』

同じく、腰巻にあったこのコメントも、長年チャレンジしつづけた人だけが実感できるせりふだろう。

最後に、本書192ページ目の著者メッセージには思わず涙がこぼれた。

「病は誰にでも等しく訪れるものです。私は思いもよらず早くその日を迎えてしまいましたが、悲観はしておりません。『明日』」をイメージすることが出来る限り、病に向かい合い、治療に取り組む覚悟です。またいずれそれが及ばなくなる日が訪れても、静かに流れるようにすべてを受容したい、そのような自分でありたいと念じております。

 出版業界はますます厳しい未来に直面しています。しかしながら、メディアとしての出版は他のメディアとして比較し、深く、重く、誠実に伝える力を持っています。その 力を最大に発揮するシステムをみなさんで築き上げてください。私はもとより、無数の読者がみなさんを応援しています。頑張ってください。

地味で目立たず、しかし本の世界が存続するためには一番重要なミッションであることはわかりつつも、出版のインフラ構築に本気で関わる人の多くが、何度も心が折れる経験をしてきたはず。

リアル・ネットや川下・川上問わず、既得権益組織の抵抗とプレッシャー、個人の良心と虚栄心との板挟みにあい、本の世界が好きな人であればあるほど、この世界を離れたいと思うこともしばし。

絶版がなく、読みたい本を読みたい人にふつうに届ける仕組みを作るために一生を捧げた出版人の最後のメッセージは、一時的に心折れそうな読者にとって最高のバイブルになりそう。

メジャー作家やタレント、仕掛けという名の小さなトレンドに頼った一過性のぷちミリオンセラー狙いにしかアンテナを張れないミーハー編集者のみなさんも、読めば出版の真髄がわかるはず。

40年かけて本の世界の仕組みづくりにチャレンジしつづけた熱き先達から、その遺志を継ぐものたちへのギフトともいうべき「良書」だなと。

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